ローリー・ロリキートには罹りやすい病気があります。鉄貯蔵病です。これはウィキペディアです。人間向けの説明になります。

「鉄過剰症は体内に鉄が過剰に蓄積されることによって起こる症状また、遺伝子疾患によってヘモクロマトーシスが引き起こされる場合もある。特有の自覚症状は無いが進行すると肝障害や心不全などの臓器障害を引き起こす危険性がある。肝臓や脾臓に鉄が滞留する血鉄症Hemosiderosisヘモジデローシス)と肝臓、膵臓、皮膚に貯蔵鉄が沈着するヘモクロマトーシス(Haemochromatosis)に分けられる。」

人間の医学用語は鳥の医学用語として適当ではないのですが、わかりやすいので。
鳥の医学用語としては鉄貯蔵病と呼ばれます。体内の鉄分が蓄積し、その毒性により肝臓の細胞障害、機能障害を来す病気です。九官鳥、オオハシ、極楽鳥、ヒオウギインコ等「鉄貯蔵病感受性種」に見られます。昆虫類を食べる鳥、果物を食べる鳥で発症しますが、これらの鳥さんは体の中に鉄分を効率よく取り込み、主食の糖分を効率よく吸収する腸のシステムを持っているため発症すると考えられています。しかし、まだ原因は解明されていません。また野生では滅多に見られないそうです。野生下では鉄などのミネラルが少ないのですが飼育下の鳥さんでは食事中の鉄が多いために貯蔵過剰となります。
 
呼吸器症状、呼吸困難、嗜眠、不全麻痺、中枢神経症状、腹部膨満、食欲不振、無気力、衰弱、削痩、嘔吐、体重減少、下痢、嘔吐等があげられますが、ほとんど表には現れることがなく突然死を引き起こすことが多いです。体内に蓄積された鉄分は非常に毒性が高く、肝臓、膵臓、心臓、脾臓、中枢神経に蓄積しますので、その臓器がおかされてしまいます。金属中毒が恐ろしいのは誤嚥による鉛中毒でご存知かと思います。

この病気には予防しかありません。鉄分の低い食事です。ビタミンCは鉄分の吸収を促進しますのでビタミンCの多く含まれている食事、特に柑橘類は控えます。果物を主食にしているからと果物をあげすぎるのもです。ビタミンC、鉄分を多く含みます。適度にあげましょう。日本の果物は糖分が高いものが多いので肥満にもなりますしね。

専用フードを与えていれば予防できるはずですが海外では表示と異なる鉄分含有量のフードの例もあるそうで(2001年報告例ですが)注意が必要です。野生下では見られない病気ですからフードには慎重になる必要があります。ちなみに予防のための推奨鉄分濃度は100ppm以下です。しかしニワトリの成長に必要な量は60~80ppm、ローリー・ロリキートは25ppm以下しか必要としません。本当に少ないですよね。そしてフードの説明書等に鉄分含有量の記載はありません。ローアイアンと書いてあるくらいです。もう少し詳細な説明が欲しいですね。参考に下記を。ローリー・ロリキート、九官鳥、オオハシなどのフードに鉄分がどれくらい入っているかの表です。2005年のものなので少し古いです(廃番になっているフードも多いです)。

 

http://www.buffalobirdnerd.com/clients/8963/documents/Lowirondietsforlories.pdf

 

主治医からは「ローアイアンと記載のある専用フードであれば、そこまで気にすることはない」との意見も頂きましたが、こうして見てみると高いのではないだろうかと心配になりますね。

 

以下は、私の想像(妄想?)かもしれませんが、何かのヒントになるかもしれないと思い、記載します。

 

私やローリー・ロリキート飼いさんたちは、鉄貯蔵病にとても神経を尖らせ、鉄分とビタミンCを控えてきました。肝臓や腎臓に負担をかけないように、と。 しかし。私が知っている限り、旅立ってしまった理由が「鉄貯蔵病」による、というローリー・ロリキートはいません。ほとんどのローリー・ロリキートが突然に旅立つか、具合が悪い=肝臓か腎臓の値が悪い、感染症を疑われる、でした。肝臓と腎臓が悪いのも、フードのたんぱく質が多くてなのか(後述します)、感染症から悪くなったのか、本当に鉄貯蔵病なのか。本当に、わかりません。何故、かわいいこたちを失わねばならなかったのか、何が理由なのか、飼い主さんたちは嘆くしかできません。納得ができないため傷が深く、いつまでもとらわれてしまう。 

 

鉄貯蔵病が恐ろしいのは、突然死を招くこと、肝生検が必要なため、生前に確定診断を行うことが難しいところだと思います。でも、罹る可能性が高いのだから、気を配らねばなりません。でも、どうやって・・・?  

鉄貯蔵病を防ぎたい。この病気には予防しかない。我が家は特に感受性が高いと言われるテリハです。特に気をつけたい。いいえ、気を付けてきたつもりです。良いと思われるローリー・ロリキート専用フードをあげています。野菜も果物も控え目です。・・・これ以上、何をどうしろと?日本と海外とでローリー・ロリキート専用フードに違いはほとんどありません。入手できないものもありますが、まあまあ変わらない。日本と海外の飼育、他に何処が違うの?食べ物は一緒、果物野菜は日本の方が確かに糖分は高いかも、他には?水?日本はほぼ軟水で硬水ではありませんよね。何で硬水かといいますとアメリカの動物病院のローリー・ロリキートについての記載に飲み水の鉄分をチェックしろとあったからなのです。

 

http://azeah.com/birds-parakeets/lorikeets-low-iron-diets 

 

この病院はアリゾナにあって、アリゾナは硬水だからなのだろうと思います。しかし、このサイトの最後に気になることが書いてあります。「タンニン」?  

「タンニン」。私はタンニンと聞くと、お茶より先に柿が脳裏に浮かんでしまう人なのですが。他にもワインにも入っているそうですね。タンニンは皮を鞣すのに使用され、また渋味があるということで知られています。昔は鉄剤と緑茶(お茶)を一緒に飲むな、鉄剤服用の30分から1時間前後は緑茶を飲まないで、と 言われていました。お茶に含まれるタンニン酸と鉄とが結合し、水に溶けにくい物質が 生じて鉄剤がうまく吸収されなくなると考えられていたからです。私はお茶スキーですが貧血でもあったため、お茶を飲むなと言われて、がっかりした時期がありました。 

 

この鉄分の吸収を阻害する性質のため2010年頃に海外のサイトに「ローリー・ロリキートにお茶を」の記載があり、話題にのぼってはいました。 しかし、現在ほど情報が多くなかったこと、人間ならともかく、体の小さな、それも 特殊な食性の鳥に、お茶を飲ませるのはどうなの?適量も全くわからないし、ということでスルーされていました。お茶スキーの私も、体調の悪い時に濃い緑茶を飲むと胃が痛くなることがあります。お茶自体にも効能はありますが、お薬としても使用されていましたし、カフェインも入っていますしね。 

 

ただ、人間用ですが、最近は事情が変わってきているみたいです。  

病院のサイト 

 

http://www.hosp.ikeda.osaka.jp/02active/action/plaza/qanda_naifuku/qanda10.html 

 

「近年詳しく実験が行なわれた結果、貧血患者では体内の鉄量が減少した状態にあり、腸管からは効率よく鉄が吸収されます。ですから、タンニンによる吸収阻害は無視できる程度と考えられるわけです。つまり、必要とされる鉄の量は必要なだけ吸収されるということです。最近では、鉄が徐々に溶け出す錠剤が開発され、これらの薬品では吸収抑制を全く受けないことがわかっています。」 

 

あっ貧血でもお茶を飲んでいいんだー。じゃあローリー・ロリキートにも、タンニンをあげなくても大丈夫だよね!と思ったのですが。人間の貧血事情とローリー・ロリキートの鉄分を吸収しやすい特殊な腸の事情は、ちょっと異なりますよね?どうしたらいいの?

私が2010年頃にお茶とタンニンについて知った時は「鉄分吸収阻害のため、鉄分吸収が良いローリー・ロリキートに良い」というだけで、他に何の情報もありませんでした。でもやっぱり気になるし!と色々と調べてみたところ、どうもローリー・ロリキートより同じく果実食をし、同じく鉄貯蔵病に感受性が高いオオハシさんサイドの情報のようなのです。 

 

オオハシさんの飼育について簡潔にまとめられたサイト 

http://xn--qckubp0dr1j.jp/oohasi 

 

鉄分とビタミンCを控えること、消化吸収が良く糞がすぐ出ること、動物性たんぱく質を控えること。ローリー・ロリキートと重なることが多いですね。この中に、気になる記載が。「野生のオオハシはグァバや未熟なバナナなど、鉄分の吸収を抑えるタンニンが豊富に含まれている食物を食べているので、肉を食べても大丈夫だと考えられています。」オオハシさんは昆虫(これはローリー・ロリキートも食べる種類はいますね)、爬虫類、鳥の卵や雛も食べるそうで、この動物性たんぱく質の吸収を抑えるのに、タンニンを摂取しているということらしいのですね。 

 

オオハシさんが枯葉などがたまった、タンニンの豊富な川や水たまりの水を飲んでいると記載があります。 

https://www.amazona.co.za/research/toucans.htm 

 

http://piciformes.org/pdf/iron_storage_disease_softbilled_birds.pdf 

 

鉄貯蔵病についての記載とオオハシさんマニュアル。動物園でオオハシさんにタンニンを与える実験をやっているとの記載があります。その記事、見かけたんですがちょっと紛れちゃいました(汗)。 ロンドン動物園のお茶を飲むオオハシさんの写真なら検索すればすぐ出てきます。 

 

https://holisticbirds.wordpress.com/health-and-disease/disease-list/iron-overload-disease/ 

 

http://aviansag.org/Husbandry/Unlocked/Care_Manuals/Toucan-manual.pdf 

 

つまり、同じような食性であり、同じような病気に罹るオオハシさんが葉っぱでタンニンなら、ローリー・ロリキートにもいいんではなかろうか?という流れになったのではないでしょうか、多分。ローリー・ロリキートと自然界におけるタンニンとのつながりは、残念ながら私レベルスキルでは発見されませんでした。

 

幾ら鉄貯蔵病が恐ろしく予防したくとも、流石にお茶をあげるようなチャレンジャーには私は怖くてなれません。本当に「鉄貯蔵病に罹っているのか?罹っているとして、快復させるために(もしくは現状維持のため)服用して効果があるのか?」という疑問点もあり、その疑問点を抱えたまま、お茶をあげるのはやはり怖いです。 

 

ただ、最初の記述にあったようなタンニンを含む果物をローリー・ロリキートも食べている可能性はあると思います。オオハシさんとは生息地が全く異なりますがバナナは熱帯アジア原産です。他にも樹皮やナッツにもタンニンは多いそうで、野生下では、そうやってタンニンを摂取して鉄貯蔵病予防をしている・・・のかもしれません。 

 

これは、私の推測です。何故こんなことを思いついて調べだしたかというと野生のローリー・ロリキートのお写真で、バナナの花と一緒に写っているのを見たからです。バナナの花に齧りついているのとか、花粉をたべているものも。熱帯地方ではバナナの花を食用にするようで、灰汁を抜いて食べるそうです。熟していないバナナも渋くて食べられないそうなので、花の部分もタンニンで渋いのかな?まあ花自体ではなく、齧って穴をあけて中の蜜を食べている可能性の方が高いのですが。バナナの花も栄養価が高いそうです。貧血、糖尿病、腎臓にいいとか血糖値を抑制するとか。えっ私もちょっと食べてみたい(笑)。・・・と思ったら缶詰が販売されているみたい。クックパッドにも調理方法が載っていました。(実験にタマリンドのジュースをあげたというのを見ました。流石にタマリンドは入手できませんでした。) 

 

という紆余曲折があって、今現在、我が家のローリーずのごはんのトッピングのレパートリーに青バナナと二種類のグァバが仲間入りしました。我が家はフレッシュな果物以外は食べてくれず、固形物があまりよくないであろうテリハなのでドライな果物、野菜、花、ハーブなどをミルミキサーで粉砕し、朝のごはん時に日替わりでちょっぴりずつトッピングしているのです。勿論、調べながら観察しながら、です。 

 

気を遣うべきところが多いローリー・ロリキートのごはん。鉄貯蔵病は野生では見られません。発病していても、発病しているかどうかはわかりません。なるべく自然な形で予防できたらなと、日々、手探りしています。 

  

以前「アマゾンのコンゴウさんが有毒な種子の解毒剤として粘土を食べるようにローリー・ロリキートも何かしてなかろうか」と日記に書いたことがあります。中国・日本・台湾に分布するアオバトさんもミネラルや塩分を求めて森林部から海岸まで飛んでゆき海水を飲むそうです。海まで飛べない地域のアオバトさんは温泉水を飲む群れがいるそうです。 

 

何となくタンニンがローリー・ロリキート(&オオハシさん)にとって、それっぽいのかな?と思ったりします、勝手に。(ただアマゾン以外のコンゴウさんは粘土を食べているのか?という疑問はあり)ただ、どれについても解明され切れておらず「じゃないのかな?」レベルなので、「じゃあ、これをあげれば大丈夫!」という話ではありません。 コンゴウさん、アオバトさんも環境や遺伝の部分が多いとも言われています。例えばアマゾンのコンゴウさん、海近くの森林部に棲むアオバトさんは粘土の崖や海へ、という環境。「そこへ行ってこれを摂れば大丈夫」と教えてくれる遺伝や群れの仲間。というふうに。ローリー・ロリキートの場合も、環境的・遺伝的に左右されるでしょう。 

 

様々なことが、少しでも早く解明されればいいのに!ローリー・ロリキートの(というか鳥類の)鉄貯蔵病についても、少しでも早く解明されることを願ってやみません。

 

 *タンニンには抗菌・抗酸化作用・・抗アレルギー・腸内環境をととのえる効果があると言われていますが、摂取し過ぎると勿論、良くありません。あげる時は注意深くあげて下さいね。

 

*タンニンなどを鉄貯蔵病の感受性の高い鳥にあげることに対して、研究が進んでからにしてねという意見もあります。オオハシさん、ゴクラクチョウさん、九官鳥さんの鉄貯蔵病についての論文です。だから早く研究をすすめて欲しいです。 

 

https://pdfs.semanticscholar.org/ed23/c282c880413e906cdddf348640e98708f70c.pdf

 

この私の妄想ですが、主治医に話しましたところ、下記のようにお返事頂きました。

 

「ローリー・ロリキートやオオハシなど、所謂ローアイアンの鳥における鉄貯蔵病は昔から有名ですね。しかし、これは飼育不宜によって招かれる病気で、現在のローアイアン用フードを用いている限りは発症しないものと考えております。死因がわかっているローリー・ロリキートたちの大半は高尿酸血症、痛風です。鉄貯蔵病は肝臓の病気ですので、死因とは考えにくいと思います。」 

 

と、いうことで。鉄貯蔵病については、専用フードをあげビタミンCを控えていればそこまで気にすることは・・・ないのかな?です。肝臓よりも腎臓をメインに考えていらっしゃる様子でした。 ですので、このタンニンにつきましては、ご参考程度に。普通のインコ・オウムにはタンニンはNGであるとの意見もありますので(柿などのタンニンを含むものは貧血を招くとして賛否両論があります。この貧血のあたりが普通のインコ・オウムとローリー・ロリキートの違いになるのだと思うのですが)。研究が少しでも早く進みますようにと祈るばかりです。

 

専用フードで大丈夫そうといっても、フード以外のお野菜や果物の量のバランスが崩れればわかりませんから、口にするものには気を付けてあげて下さいね。色んなものをバランス良く。難しいですが気を遣いながら、美味しく楽しく過ごして欲しいものですね。

 

2021年1月25日 追記

 

(1) Shin@獣医病理学者さんはTwitterを使っています 「鉄染色で青く染まっている肝細胞内のヘモジデリン。コウモリの肝臓。 飼育下の果実食コウモリでは肝臓にヘモジデリン沈着をよく見るように思います。果実主体の餌ではビタミンCが過剰になって、鉄吸収が促進されているのではと推察していますが、本当かどうかは分かりません。 https://t.co/SbkDDzMD8T」 / Twitter

 

「鉄染色で青く染まっている肝細胞内のヘモジデリン。コウモリの肝臓。

飼育下の果実食コウモリでは肝臓にヘモジデリン沈着をよく見るように思います。

果実主体の餌ではビタミンCが過剰になって、鉄吸収が促進されているのではと

推察していますが、本当かどうかは分かりません。」

 

これに対し私が「これはローリーや九官鳥、オオハシ等の鳥類と同じ理屈、

ということでしょうか?何故そんなハイリスク(そう)な進化を

したんでしょうね?」とおたずねしますと、先生はこうお答え下さいました。

 

「もしかしたら同じようなものかもしれませんね。これらの動物は体重を

軽くするために消化管が短く、その代わりに吸収効率がめちゃめちゃ

良くなっているからなのかもしれません。ローリー以外のインコにも

たまに見られます。」

 

消化管が短く、吸収効率が良い。なるほど、ローリー・ロリキートについて

語る時には外せないキーワード。この辺りはもっと深く突き詰めて

考えていく必要があるなと、改めて思いました。